(月)小説 マンデイモーニング 1

  目が覚めると、僕はベッドの上にいた。朝日が眩しい。小鳥の奏でるメロディーに耳を傾けていると、キッチンからはトントントンと包丁が負けじとリズムを刻む。小鳥と包丁の協奏を聴きながら、これから始まる1日に少し憂鬱になる。そんなどこにでもあるありふれた朝だ。
  10年間お馴染のスーツに今日も腕を通すと、それを見計らったかのようにキッチンからは朝の匂いが立ち込める。さぁ、朝ごはんだ。階段を一段二段と降り、僕はふと立ち止まった。何かがおかしい。だが、その何かが分からない。三段四段とさらに階段を降り、五段目に足を踏み入れようとした瞬間、僕はその場から動けなくなった。その理由は他でもなく、その何かに気づいてしまったからだ。それと同時に異様な寒気が体中を駆け回る。階段の四段目までをカルフォルニアとするなら五段目は北極だ。
   心臓の鼓動が次第に大きくなるのが分かる。落ち着け落ち着け落ち着けと呪文のように心の中で復唱する。震える足を全力で抑え、2階の寝室を目指し、降りてきた階段を再び昇る。まるで、初めて空き巣に入る泥棒のように。階段五段だけの寝室までの距離が、今はフルマラソンのゴールくらい果てしなく感じる。やっとの思いでフルマラソンを完走し終え、寝室に辿り着いた。
  高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、一度冷静に状況を把握しようと試みる。寝室のゴミ箱には、キラリと光るリング。机に散らかった大量のビールの空き缶。つまり、僕は昨日離婚した。というより妻に家を出て行かれたと言った方が正確だろう。にも関わらず、下には誰かがいて、料理を作っている、、

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