(月)マンデイモーニング 第3話
眼を閉じてから3秒程たっただろうか。僕の予定では、2秒前に僕はこの世から姿を消しているはずだ。ドアを開けると隠れも怯えもせずに、死を望む男が眼を閉じて部屋に一人立っている、なんて状況は目の前にいる誰かが仮に世界一凶悪な殺人犯だとしても想定外の状況なのかもしれない。だとしても、数秒後には全てが終わっている事だろう。今この瞬間、目の前の誰かはかすかに笑っているようだ。眼を閉じていても、目の前から聞こえるその声がかすかな笑い声である事くらいは分かる。
俗にサイコパスと言われる人達は、"その"瞬間に最高の快楽を感じるらしい。だとしたら、"その"瞬間を目前にしている今の状況において、笑いたくなるのも当然だろう。誰かが部屋に入ってきて6秒程経過しただろうか。その時、僕の中には、自分の最期を見届ける人間がどんな人なのか見たいという好奇心が芽生えていた。希望を失った人間に恐怖という二文字はどうやら無いらしい。
ただかすかに笑っているだけの誰かに痺れを切らした僕は、ちょっとだけ眼を開ける事にした。うっすらと眼を開けていくにつれ、ぼんやりとそのシルエットが分かる。結構痩せていて、髪は長髪のようだ。ここまでくると、僕の好奇心は止められない。眼を開けよう。そう決断する事すら待てずに、僕はしっかりと相手の顔を認識していた。
そこには、見知らぬ一人の女性が立っている。手には、包丁を、、、持っていない。そして、まるでマリアのような優しい笑顔でこちらを見ている。
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