(月)マンデイモーニング 2話
しばらくすると、下の方から何か音が聞こえてきた。ドン、ドン、ドンというその音は、間違いなくこちらに近づいている。僕の気が確かならば、それは誰かが階段を登ってくる足音だ。
ドン、ドンまた一段二段と近づいてくる。その音が近づけば近づく程に僕の気は遠のいていく。
そして、音がピタッと止まった。この事が何を意味しているのか。それは、階段を登ってきた誰かが急に消えていなくなった、もしくは、今までの出来事全てが僕の幻聴だった。答えはおそらくどちらもノーだ。優秀な解答は、今この瞬間、僕の部屋の前に誰かが立っているという事だろう。今、この世で2人を遮るものはこのドアだけだ。
昔、幽霊をみたという友人が、恐怖のあまり足が動かなかったと言った事を散々馬鹿にしたあの日の自分を今なら軽蔑できる。ガチャッという音とともに、ドアのぶが回る。もう汗すらでない。人間が不安になるのは心に希望を抱いているからだそうだ。真の絶望に陥った人間は不安という感情を失う。
よくよく考えれば、昨日、妻に家を出て行かれ本気で生きる意味を見出せなくなっていた男だ。そう考えると、ここにあるのは、自らこの世との関係を絶つのか誰かに絶たせてもらうのかの違いだけかもしれない。ギィーっという音ともにドアが開く。あと1秒後におこるだろう事を覚悟して、僕は眼を閉じた。
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